2025年3月19日に東京都心で雷と雹(ひょう)を観測
2025年3月19日の東京都心では、雷や雹(ひょう)、雪を伴う不安定な天気となりました。
気象庁の観測によると、東京都心では5時40分と7時5分〜7時40分にかけて雷を観測し、7時20分には直径9mmの雹を観測しました。
(氷の粒は大きさによって名称が異なり、直径5mm以上を「雹(ひょう)」、5mm未満を「あられ」と呼びます)
また、10時には積雪1cmを観測しています。
参考:東京の観測気象データ(気象庁))
今回の雷や雹は、
・上空に強い寒気が流れ込んだ
・下層に暖かく湿った空気が流入した
ことなどにより、大気の状態が非常に不安定になったことが要因と考えられます。
500hPa天気図から上空の寒気と正渦移流を確認
下の天気図は、2025年3月19日9時の500hPa高層天気図です。
(ECMWFのオープンデータを使用して描画)
青線は気温、色は相対湿度を示しています。
寒色系は湿った空気、暖色系は乾燥した空気を表しています。
500hPaでは、日本海の能登半島付近に寒気の中心があり、関東地方にも氷点下30℃前後の強い寒気が流れ込んでいました。
舘野(茨城県つくば市)の2025年3月19日9時の高層観測では、500hPaの気温が氷点下30.7℃まで低下していました。
上空にこのような強い寒気が入ると、大気の鉛直方向の温度差が大きくなり、大気不安定が強まりやすくなります。
正渦移流によって上昇気流が発生しやすい状況
次の500hPa高層天気図では、黒実線がジオポテンシャル高度、色が相対渦度を示しています。
紫色の領域は特に渦度が大きい領域です。
2025年3月19日午前3時頃は東京都付近の渦度はそれほど大きくありませんでしたが、9時には渦度が大きくなりました。
関東地方では「正渦移流」が顕著な状態でした。
正渦移流域では大気の上昇運動が発生しやすくなるため、積乱雲や雪雲の発達を助けます。
関東地方では雷雲や降雪を伴う発達した降水域が形成されやすい気象条件となっていました。
850hPa天気図から暖かく湿った空気の流入を確認
下の天気図は、2025年3月19日3時の850hPa高層天気図です。
(ECMWFのオープンデータを使用して描画)
850hPa天気図では、相当温位の高い空気が南東側から関東地方へ流れ込んでいたことを確認できます。
相当温位が高い空気は、暖かく湿った空気であることを示しています。
関東地方では
・上空には強い寒気
・下層には暖湿気
という組み合わせになっており、対流活動が発達しやすい典型的な大気不安定の場となっていました。
この暖湿気の流入は、雷雲や降雹の発達要因の一つになったと考えられます。
925hPa天気図と地上天気図から風の収束を確認
下の天気図は、2025年3月19日9時の925hPa高層天気図です。
(ECMWFのオープンデータを使用して描画。地上天気図は気象庁の天気図)
矢印は風向・風速、色は空気の収束を示しています。
紫色や赤色は収束が強いことを意味しています。
気象庁の地上天気図では、関東付近に前線を伴った低気圧が解析されていました。
925hPa天気図でも、この低気圧周辺で強い風の収束が確認できます。
空気が収束すると、行き場を失った空気が上昇するため上昇気流が発生しやすくなります。
さらに、低気圧の接近によって850hPaで見られた暖かく湿った空気の流入も強化され、積乱雲が発達しやすい環境が整っていたと考えられます。
2025年3月19日に東京都心で雷と雹が発生した要因まとめ
2025年3月19日の関東地方では、複数の要因が重なったことで大気の状態が非常に不安定となりました。
主な要因は以下の通りです。
・500hPaで氷点下30℃前後の強い寒気が流れ込んだ
・850hPaでは暖かく湿った空気が関東地方へ流入した
・低気圧周辺で風の収束が強まり、上昇気流が発生しやすかった
・深いトラフの接近に伴い、正渦移流が顕著となった
→ 上昇気流によって積乱雲や雪雲が発達した
これらの条件が重なったことで、東京都心では雷や雹(ひょう)が観測される不安定な天気となりました。