ECMWF天気図の読み方

ECMWFのオープンデータを使った天気図の読み方を紹介しています。
気象庁HPから抜粋した降水の分布図*と比較しながらECMWFの数値予報天気図の見方を紹介します。
*2023年10月15日9時30分の1時間降水量の図

解析雨量の図
925hPa等圧面天気図
925hPa等圧面天気図の例

925hPa等圧面天気図は、800mくらいの高さに対応します。
低気圧や前線の位置、降水の強さやピークのタイミングを予想することができます。

色は比湿、赤線は気温です。
赤色は水をたくさん含んだ空気、青色は水分の少ない空気を表しています。
実際の降水分布と比較すると、比湿の高い空気が入っている所で降水量が多くなっています。
関東の沿岸付近に暖かく湿った空気が入り込んでいます。
伊豆あたりで風が反時計回りに回っていますので低気圧が関東地方に近づいていることがわかります。

850hPa等圧面天気図
850hPa等圧面天気図の例

850hPa等圧面天気図は、1500mくらいの高さに対応します。
この天気図でも低気圧や前線の位置を予想することができます。

色は相当温位、赤線は気温です。
850hPaの高さは比較的陸地の影響を受けにくく、下層天気図の代表として使われています。

700hPa等圧面天気図
700hPa等圧面天気図の例

700hPa等圧面天気図は、3kmくらいの高さに対応します。
雨雲と対応が良く、雨の降り始めや降り終わりを確認するのに役立ちます。
中下層の代表的な天気図で、風向きから雨雲が流れる方向を知ることもできます。

色は相対湿度です。青色は湿った空気、橙色は乾燥した空気を表しています。
実際の降水分布と比較すると、700hPaが湿っている場所と雨の降る場所が似ていることが分かります。
ただし700hPaが乾燥していても雨が降ることはあります。
この日も山口県や福岡県に雨雲がかかっていますが、700hPaは乾燥しています。
高さ3km未満の低い雲から雨が降っているためです。
(レーダーに映らないほど低い雲から降る雨もあります)。
また、700hPaだけが湿っていても薄い中層雲が出るだけで雨にはなりません。
雨の有無は他の高度の天気図も確認する必要があります。

500hPa等圧面天気図
500hPa等圧面天気図の例

500hPa等圧面天気図は、5〜6kmの高さに対応します。
地上の気圧は1000hPaくらいなので、気圧(空気の重さ)で考えると500hPaが真ん中にあたります。
中上層の代表的な天気図です。
気圧の谷や渦度の移り変わりを見ると天気が崩れるのか回復するのか傾向が分かります。
風向きから低気圧が移動する方向を知ることもできます。

渦度が正の領域(正渦域)に色を塗っています。
正渦が大きくなっていくときは天気が崩れやすくなります。
この例では北陸や関東で雨が強まる傾向になります。
伊豆付近にある低気圧は気圧の谷の前面にあって500hPaの風向が南西風となっています。
低気圧がこの後発達しながら北東に移動することも予想できます。

250hPa等圧面天気図
250hPa等圧面天気図の例

250hPa等圧面天気図は、11kmくらいの高さに対応します。
200〜300hPaの天気図でジェット気流の位置を確認できます。

空気が発散している領域に色を塗っています。
上層で発散しているとき、空気を補充するためその下では上昇気流となります。
中下層で上昇気流があって雨が降っている時に上層で空気が発散していると、雨がより一層強まります。
降水分布図と比較してみると、宮城・福島の東海上や関東地方では上層の空気が発散していて雨雲が発達しています。